日本人の日本人による日本人のためのバイク
1992年に『 PROJECT BIG-1 』のコンセプトの下に開発され登場して以来、デザインやコンセプトを大きく変えずに進化と熟成を重ねてきたCB400 SUPER FOUR (以降 CB400SF ) 。ガラパゴスな日本独自カテゴリーのトップに君臨し続ける同車の最新モデルに乗ってきたので紹介したいと思う。
優等生バイクとは何なのか
CB400SF は、『優等生で面白くない』と言われることがある。
しかし、そんなことは全くないと試乗してみて断言することができる。
確かに、教習車に採用されるほどに扱いやすくクセがないといった『優等生』な面も持ち合わせているが、この車両の特徴はそれだけではない。
今や 400cc クラス唯一となった直列4気筒エンジンを心臓に持ち、しかもそれに『HYPER VTEC』と呼ばれる機構を備えている。
HYPER VTEC は、ホンダの四輪車のエンジンに搭載される代表的なテクノロジーである『VTEC』の文字が入っているが、四輪のそれとは構造が大きく異なる。
詳しくは検索すればたくさん出てくるので簡単にだが、四輪の VTEC はバルブの開く"量”をエンジン回転数に応じて変化させるのに対し、 HYPER VTEC はバルブの開く"数”をエンジン回転数に応じて変化させる仕組みとなっている。
HYPER VTEC は CB400 シリーズの他に VFR800 シリーズにも搭載されているが、知名度的に HYPER VTEC といえば CB400 、スーフォアだろう。
現行モデルの HYPER VTEC は4世代目にあたり、インジェクション化されたときと同時に登場した『Revo』の冠がついている。 HYPER VTEC の最終形態ともいえるだろう。
1速から5速の切り替えタイミングは、スロットル開度によって 6,300rpm〜6,750rpm の間で切り替えが行われる。
大きくアクセルを開けてエンジンを回し、積極的に加速しようとしているときは低い回転数で、アクセル開度が小さくじわじわと回転数が上がっていっているような場面では高回転になるまで切り替わらない。
今回の試乗でもその差を体感することができた。
高速道路の合流時などに勢いよく切り替えタイミングの回転数に乗せたときは 6,300rpm 辺りで切り替わり、あえてゆっくりと回転数を上げて切り替えタイミングの回転数に乗せたときは 6,750rpm 辺りになるまでなかなか切り替わらなかった。
キャブレターの時代ではそこまで細かい制御はできなかったが、インジェクション化されて高度なコンピューターとセンサーを搭載されたことで、『賢い HYPER VTEC 』へと進化を遂げたのだろう。
ちなみに、6速は VTEC に入れず低燃費で快適に 100km/h 巡行できることを意識されていると思われるため、切り替えタイミングは 6,750rpm 固定である。
VTEC に入るとトルクやパワーがほんの少しだけ上がり、マフラーから聞こえる心地の良い排気音が明らかに変わって胸を高鳴らせてくれる。追い越しも、いくつかシフトダウンしてしっかりアクセルをひねってやれば無難にこなすことができる。
シフトフィーリングは、コツッと確実に入るようなタッチでクセがなく扱いやすいものだと思う。普段豪快なシフトフィーリングのカワサキ車に乗っている私は何度もシフトミスをしてしまったが。
大型バイクと比べてしまうとパワフルであるとは言い難いが、日本の道路を楽しく快適に走るには十分なパワーを持っており、加速するときも巡行するときも 250cc のバイクにはない余裕を感じる。
今や絶滅危惧種のフレームとサスペンション
CB400SF は、長年デザインやコンセプトを大きく変えることなく発売され続けてきたことは冒頭に書いたとおりだが、それゆえに令和の時代のバイクとしては時代遅れとなりつつある構造をしている。
まずはフレーム。
CB400SF は、ダブルクレードルフレームというものを採用しており、エンジンの下を通るパイプ2本でエンジンを支えるような構造をしている。
今の主流は、エンジンを強度を持つフレームの一部として使うダイヤモンドフレームで、ダブルクレードルフレームのロードスポーツバイクはほとんど残っていない。
次にサスペンション。
リアサスペンションは、左右に2本ついている単純なものとなっており、これまたクラシックなバイク以外では現代のバイクでは見かけなくなった構造である。
今の主流は、車体の中央を一本のサスペンションで繋いだもので、軽量化とマスの集中化などにおいてメリットがある。
こういった昔ながらの構造ではあるが、乗り心地に関しては非常に良かった。また、フロントとリアのサスペンション両方とも標準でプリロードアジャスターを搭載しているため、体重や乗り方に応じてばねの硬さを調整することができる。リアサスペンションに至っては、リザーバータンクを搭載したSHOWA製の結構良いものを使っていると考えられる。
私は標準より体重が軽いため、体重60~70kgに最適なようにセッティングされているといわれるバイクのサスペンションは標準だと固めに感じることが多いが、 CB400SF に関してはそのように感じることはなかった。
借り物のバイクなので峠を攻めるような走りはしなかったが、フレームの剛性感も十分でサスペンションがうまく路面の凹凸を吸収し、少し高めでスポーティーなステップ位置も相まって楽しく安心してコーナーを曲がることができた。
フロントブレーキも、ABSを搭載したダブルディスクなので制動力も大きく安心感がある。
古い構造をしているバイクではあるが、現代でも十分に通用するバイクであることは間違いないだろう。
細かいところに見えるコダワリ
CB400SF は、新車乗り出し価格が100万円前後。兄弟車の CB400SB は本体価格で既に100万円を超えており、400ccクラスとしては圧倒的な高級車となる。
まぁ、高いのは日本専売で数が出ないとか厳しい排ガス規制への対応とかコストのかかる直列四気筒エンジンであるとかが主な理由だと思う。
しかし、長く続くモデルであるため少しずつ各部が改良され質感はかなり良いものとなっている。
まずはメーター。
CB400SF のメーターはアナログのスピードメーターとタコメーターの二眼式で、その間に液晶画面が配置されている。ここには、ギアポジションや燃料計、オドメーター、トリップメーター、燃費、気温などが表示される。アナログメーター内にもいくつかのインジケーターランプが配置されている。
ここまでなら一般的で、兄貴分の CB1300 や私の愛車である Z900RS などと同じようなものであるが、 CB400 シリーズにしかないこだわりがメーターオープニングにある。
アナログメーターを搭載したバイクは、そこそこ前からキーオン時にスイングする演出を搭載している。
CB400 の場合もそれは例外ではないのだが、 HYPER VTEC を搭載していることを印象付けるためか、タコメーターも VTEC の回転数の領域には白いラインが入っており、さらにそこをメーターオープニングで針が通過するときはスピードが速くなるというなんとも細かい演出を行っている。
初めは、スピードメーターとタコメーターの動きが揃っていないのが少し気持ち悪いと思っていたが、その理由を知った時は感動を覚えた。
ちなみに、振り切ってから0に戻るまでは同じように動く。
次にステップ回り。
初めて跨ってステップに足を置いた時、結構位置が高いなと思った。それ自体はスポーティーさを感じるし、実際運転して楽しかったので全く問題ない。
よいと思った点は、足の母指球当たりをステップの上に配置した時、タンデムステップと一体型になっているため少し特殊な形状をしたヒールガードの出っ張りに、かかとを置くことができたという点だ。
愛車の Z900RS で同じことをやると、どこか力が入ってしまいなんだか落ち着かないのだが、 CB400 の場合は概ね楽に姿勢を維持することができた。
他にも、ホイールのエアバルブがL字のものを採用していたり、バイクなのにダブルホーンだったり、イモビライザーキーであったりするのだが、まだまだ改良の余地も残されている。
まずはウインカーのLED化やウェーブキーの採用、あとクイックシフターや電子制御も付いたら楽しいかもしれない。
高い完成度を誇る一台
「初心者はスーフォアの新車を買っておけば間違いない」と言われるがこれはあながち間違いではない。
大型バイクに乗っているような人が乗っても楽しめる。初心者が乗っても安心。これを高い次元で両立しているのが CB400 シリーズであり、長く楽しめるのであろう。
先にも少し書いたが CB400 SUPER BOL D’OR が兄弟車として存在している。これは、ハーフカウルがついたモデルで、長距離のツーリングでもカウルのおかげで少し楽になると思う。また、カウルの左右には小物入れがあり、それがなかなか便利なのだと元オーナーから聞いた。
今後、さらなる排ガス規制の強化や安全装備の義務化などが予想されるが、 CB400 のエンジンもフレームもかなり古いものであるため、規制の通過や新たな装備の追加が難しくなるかもしれない。
CB400 のようなデザインのネイキッドバイクは海外では人気がないと聞き、ホンダにとって各部を新規開発して日本だけで売って採算が取れるのかどうかがカギとなるだろう。
日本で走り回るために生まれてきた唯一のバイクであるともいえると思う。
このバイクを新車で欲しいと思ったのであれば、すぐにでも購入することをお勧めする。
このバイクに乗ることは、実はとてつもなく贅沢なことなのかもしれない。
走行距離と燃費
走行距離:237.2km(街中2:田舎道、ワインディング4:高速道路4)
給油量:9.18L(レギュラー)
燃費:25.8km/L
試乗の前の週の同じ時間帯に想定ルートを回り、その時の渋滞の情報を生かしてスムーズに走れる道を選択していたので道が混むことはなかった。
燃費の面からみると好条件で試乗できたと思う。
試乗車のデータ
車種:CB400 SUPER FOUR
カラー:アトモスフィアブルーメタリック
車重:201kg
エンジン:400cc , 水冷直列4気筒 , DOHC , 16バルブ , HYPER VTEC
トランスミッション:6MT
最高出力:56PS (41kW)/11,000rpm
最大トルク:4.0kgf・m (39N・m)/9500rpm
タイヤ:【前】120/60ZR17M/C(55W)【後】160/60ZR17M/C(69W)/ダンロップ・D204
燃費:21.2km/L(WMTCモード値)
価格:928,400円(税込・記事公開時点)
その他:ETC2.0車載器(装着価格50,490円)
製品情報ページ:https://www.honda.co.jp/CB400SF/(ホンダ公式)
本車両は、ホンダが運営する 『HondaGO BIKE RENTAL』を利用してお借りしました。
価格も比較的安く、安心して利用できるオプションの保証も充実しており、おすすめのレンタルバイクサービスです。
※追記(2020.12.10)
レビュー(になってるか分からんけど)動画作ってみたので、よかったら見てみてください!
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